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英国会内集会報告


3月11日(月)、東日本大震災と福島第一原発事故勃発から丸2年が過ぎたこの日の午後7時半、英国会下院内集会がJAN UK、CND、Kick Nuclearの共催で開かれた。

会場は超満員で、床に座ったり立ち見する人が多くいた。共同通信の記者も出席。9人のスピーカーが登場し、質疑応答の時間が足りなくなるほど、あっという間の2時間。

筆頭のCND書記長、ケイト・ハドソン博士は、原発は時代遅れかつ有害な技術であると述べ、核兵器と原発の廃絶のため、国内の市民グループや海外の反核・反原発運動と将来も連帯していく抱負を語った。

次に英国の専門家4人がスピーチ。

原発エンジニアであるジョン・ラージ氏は、テロなどの過酷事故は対処の方法がないので防災計画を作成しないという英国原子力規制機関の方針を批判した。英国に十分な原発事故避難計画が存在せず、事故の際に住民の安全が確保できない可能性を指摘した。しかし、ラージ氏が参考にする日本の避難基準・計画も十分とは言えず、原発過酷事故が起こればどんな基準や計画があっても住民の被曝と健康被害は避けられないのではないかという疑問が残る。

環境問題に発言してきた文筆家のジョナサン・ポリット氏は、原発を容認する環境保護派を批判し、原発新設計画の存在が電力効率化や再生可能エネルギー、蓄電技術の開発の妨げになることと述べた。原発新設に補助金を出すことは公約違反であると強調した。

原子力政策研究家のポール・ドーフマン氏は、原発は英国の総エネルギーの4%を担っているに過ぎず、原発推進の政策をとる国は世界でも少数であると指摘。脱原発に舵を切ったドイツでは再生可能エネルギーが急成長して多くの雇用も生み出しており、英国もそれに倣うべきだと主張した。ドーフマン氏によれば、福福島第一から放出された放射性物質の総量はチェルノブイリの40%にのぼる。

グリニッジ大学のステファン・トーマス教授は、政府による原発のコスト計算に廃棄物の処理・保管が含まれていない、原発に対する多額の補助金はEU法では違法であると批判。原発は政府の補助金無しには他の発電方法と競争できず、ヒンクリー原発新設を担う仏企業EDFは英国政府から十分な補助金が出ない限り事業から撤退するだろうと述べた。

後半は日本の状況を紹介するスピーチが続いた。

福島原発事故から英国に避難したアーティストのジェフ・リード氏は、被災した子どもたちの言葉を元に描いた絵を紹介。集会出席者全員が絵を掲げている写真を撮り、それをアートワークに創りあげて子どもを励ましたいと語った。リード氏は原発事故の当事者として、国や電力会社の都合で必要な情報が伏せられ、多くの子どもたちが犠牲になっていると語った。

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Fukushima Children's pictures
Houses of Commons, London 11.3.13


子どもたちを放射能から守る世界ネッットワーク代表は、子どもたちが汚染地帯に住み続けており、チェルノブイリ事故後より高い確率で小児甲状腺がんが出現していると述べた。1959年に結ばれたIAEA とWHO間の協定により、原子力推進団体IAEAの合意無しにWHOが被曝に関する調査報告が出来ないことを指摘。福島で母親たちが放射能への不安の中で意見の違う家族や地域住民から孤立し、放射能の被害は被曝にとどまらず、家庭や地域の分断を起こしていると述べた。

JAN UK代表は、放射能の危険性、特に内部被曝による健康被害のメカニズムを説明、チェルノブイリや福島の健康被害がWHOにより過小評価されている可能性を指摘。広島の原爆投下後、恣意的に被曝の被害を小さく見せる比較研究によってIAEAの安全基準が作られたいきさつに言及した。原子力推進派による情報操作や反対封殺の手段を批判し、地球汚染を食い止め、次世代が生き残るため、脱原発にむけて世界の市民の連帯を呼びかけた。

反原発団体キック・ニュークリア代表による最終スピーチでは、ドイツの果敢な脱原発・再生可能エネルギー推進の政策と実例が紹介され、脱原発が不可能ではなく、唯一の現実的なエネルギー政策の方向性であることを強調。英国もドイツに続き、原発の無い未来を目指すべきであると締めくくった。

各スピーチが予定時間を大幅に超えたため、質疑応答の時間がほとんどとれず、情報希望者メールリスト作成の時間も足りず、非常に惜しく感じられた。スピーカーが多数なら集会を3時間にする、あるいは、テーマごとに2回に分けて行うなど、次回からの改善が望まれる。集会後も会場の内外でスピーカや参加者による熱心な意見交換が続いた。

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WNSCR・代表スピーチ


JAN UK・代表スピーチ